FEATURE - 2024.12.03

「自転車乗り」に愛されるE-bike。FARPOINTが目指すもの_case.02 サンテ

自転車を熟知する人は、E-bikeをどう見る?

「今までスポーツバイクに乗ったことがないけど興味があった」
「自分の足に自信がないけどサイクリングをしてみたかった」

 

スポーツ走行や自転車遊びをアシストするという面で、これまで国内で流通していた「電動アシスト自転車」とはまったく違ったものとして広く受け入れられ始めたE-Bike。体力的な間口の広さや、目指すところが異なるその機能性故に、これまでスポーツバイクに触れてこなかった「非スポーツバイク層」を中心に、ここ数年で急激にシェアを増やした。

 

一方で、現在もロードバイクやマウンテンバイクを乗りこなしている健脚なサイクリストからすれば「さすがにアシストはまだ必要じゃないよ〜」なんて言うふうに、どこかしら敬遠されがちなのも事実。

 

でも、もしもあなたが今スポーツバイクに乗っていて、その理由の一つが「風を感じながら自分の好きな場所へ出かけることが好きだから」ならば、少しだけ想像してみて欲しい。

 

旅が好きで自転車に乗り始めたサイクリストなら、今までは敬遠していた距離を楽に行くことができる。その先では見ることができなかった景色と出会えるだろう。

 

「生活における実用性と趣味のサイクリングは相入れないから、普段乗りには一般電動アシスト自転車が一番。」と信じて疑わなかったサイクリストだって、E-bikeがあれば「普段乗り」が「豊かなサイクリング」に変わるかもしれない。

 

サイクリストが「良い」と思う自転車が、そうじゃなかった人にとっても「良い」ならば、これほど素敵なことはない。
だからこそ、FARPOINTは、まず「自転車乗り」にこそ興味を持ってもらえるE-bikeを目指した。


 

前回に続く第2回。お話を聞いたのは、横浜のメッセンジャー会社「クリオシティ」に所属する、自転車メッセンジャーのサンテさん。この道20年を目前にするベテランだが、同社では「ESG窓口 兼 グリーン物流アドバイザー」のポジションも担い、単なる物品のデリバリーにとどまらず、環境や社会への影響を考慮した付加価値の高いサービス提供にも取り組んでいる。

 

また2023年には、日常の業務のかたわら、世界中のメッセンジャーのお祭り「CMWC」の横浜開催の発起人のひとりとして仲間たちとともに尽力した人物でもあり、ベテランとなった現在もなお、仕事とそれを取り巻くカルチャーに変わらぬ誇りを持ち続ける、根っからの「自転車乗り」だ。

横浜スタジアムで開催された、CMWC Yokohama 2023 での一コマ。中央がサンテさん。

-普段の自転車はどんなものを乗られてるんですか?
デンマークを拠点にするブランド、OMNIUMのカーゴバイクですね。コペンハーゲンの世界最速メッセンジャーカンパニー”By-Expressen”が手掛けるブランドというのもあって、かれこれ10年ぐらい、通勤からデリバリー〜プライベートまでずっと乗ってます。
フロントにクレートをくくりつければ、普段の生活に必要なものは大抵乗せられるので、そこに子供とキックバイクを乗せて公園に遊びに行ったりしてます。あとは、たまに気分転換でシングルスピードも乗ったりします。

*クリオシティ
日本におけるメッセンジャーシーンの萌芽期とも言える2003年から横浜を拠点に20年間以上、上質で自由度の高いデリバリーを提供し続ける老舗メッセンジャー会社。
現在は横浜と東京の2拠点のネットワークで、自転車便を中心に、案件毎に適したモビリティを組み合わせデリバリー業務を行う。

 

 

-日常でスポーツバイクをよく乗るサンテさんにとって、あえてE-Bikeにはどんなことを期待する?どんなものであって欲しい?
そこは仕事柄もあって、スピードや走りにおける加速というよりは、やはり「荷物を運ぶこと」への活用の可能性を期待しちゃいますね。自分自身普段からカーゴバイクに乗っているからというのもありますが、「モノを運ぶ自転車」の未来は、もう電動アシストなしにはありえないと思うんです。
それまでアシストなしの自転車では諦めざるをえなかった坂道であったり大きな荷物であったりを、電動アシストがあるからこそ可能にすることもできる。
現在弊社は主に「自転車便」と「バイク便」を荷物や場所によって適宜組み合わせる配送システムですが、日本の法律に適合するカーゴE-Bikeの普及が進めば、「免許がいらない」と言う自転車最大のメリットを活かしながら、現状バイク便が担っている部分を置き換えることも期待できる。そうなると働き手の幅も広がるし、まだまだ自転車便の伸び代を感じますよね。
コストもかからず環境に良いのという点でも揺るぎ無いですし。

-確かに、日本もここ数年で、環境に対する意識も少しづつ高くなっていたように感じます。
ですよね。ただ、どうも「環境に対する影響」だけが先行してフィーチャーされがちなのにも、ちょっとだけ違和感を感じちゃうんですよ。それだけだと「自分はもう電気自動車や電動バイクに乗ってるから関係ない」で終わっちゃいそうで。
確かに自動車やバイクが電気をエネルギーにすること自体は、環境に対しても好影響をもたらす、素敵な進化だと思います。ただし見方を変えると「自分の意思とは遠いところでスピードが出せちゃう乗り物」であることには変わりはなくて。
極端な話、いまはアクセルを回すだけで一定のスピードが出せて、免許も不要な電動モビリティだって出てきている。そしてこれらの急激な普及によって歩行者との危険な接触事故などが増えてきているのも事実。
自分たちは、普段から道路上でいろんなモビリティと関わりあうからこそ、あくまで「人が中心となるようなコミュニティ」をもっと広い視野で考えて行きたいなと。
数ある選択肢の中からベストな手段をチョイスして、まずは自分たちのデリバリーでもそれを表現していければと思ってます。

-なるほど。人が中心であること、確かにとても大事なことのような気がします。
そう言う背景もあって、やっぱりあくまで自転車がベースにあるE-Bikeは、とても興味を持ってます。

-そんな中、FARPOINTに乗ってみてどうでしたか?
正直、ここまで「普段乗る自転車」に近い感覚でE-Bikeを乗ることができるとは思ってなかったですね。
さっきのコメントとは少し矛盾しちゃうんですが、実は仕事柄、E-Bikeをデリバリー用の車両に採用するのをどこか敬遠してしまうところは、確かにあるんです。
と言うのも、これまで自分がみてきたE-Bikeって「ロードバイク、もしくはMTBに電動アシスト機能がついたもの。もしくはファッション性に特化した電動アシスト」っていうイメージが抜けなくて。
そうなると「自分にはまだ必要ないな。これまで自分の体一つでやってきたメッセンジャーが、急に電動アシストのロードに乗るっていうのも、なんか負けた気がするし」っていう考えになっちゃう。
でも今回、FARPOINTを通勤やデリバリーに使ってみたことで、食わず嫌いは良くなかったんだな…と素直に思えました 笑。
FARPOINTだったら長めの専用キャリアもあるし、両足スタンドが標準装備だったり、ちょっとぐらい荷物を乗せて重くなっちゃってもタイヤが太いから安心だし、これまで自分の周りに見えていたE-Bikeとは少し違って、普段使っているカーゴバイクに近い使い方も十分にイメージできました。

-仕事柄いろんなE-bikeに触れることも多いかと思いますが、それらと比べて印象的な部分とかはありましたか?
やっぱり基となってるコンセプトがあまり他とかぶっていない、独自路線な印象ですよね。
大前提としては、フルサイズのホイールでスポーティな走行を基準にして作られているんだけど、速さとか、スポーツのための、っていうよりは、もっと全体的な生活力みたいなものを感じたというか。こういう匂いがするE-Bikeって、自分の周りではあんまりみたことがない。
あと、コンセプトにはそういう「遊び」の要素を持たせつつも、SHIMANO製のユニットで航続距離の長さや安心感もしっかり担保されていることや、型式認定をしっかり取得していたりと中身の「真面目」な部分とのギャップも個人的には好印象。
正直、この辺り今の日本の市場はすごくグレーなものが乱立している印象だから、もし僕たちみたいにビジネスでE-Bikeを採用する可能性があるなら、なおさらその辺は気にしておきたいところですし、そうでなくても高価格なE-bikeなんだから、購入する上で気にする人は多いはず。

スムーズな走行性能の要となるE-ユニット、コンポーネントともに信頼のSHIMANOを採用。
やや長めに取られた、専用セミロングキャリアで積載力も高い。
横浜の激坂も、アシストのおかげで楽なポジションでスムーズに登坂することができた
E-Bikeでは珍しくシートチューブ後にバッテリーが位置する。おかげでフロントトライアングルの自由度が高く、フルサイズのバッグの取り付けも可能

-どんな人にオススメ?
少し肩の力を抜きながら、自分のペースで自転車の生活をいろいろ楽しみたい人には、ぜひ選択肢に入れて欲しいかな。
最新のスポーツバイクの延長線上としてのE-Bikeが欲しいって言うよりも、普段にも乗りたいしでもツーリングにも行きたいし、もっと気軽に何でもできる自転車が欲しい!っていう人がこれから求める自転車の形としてぴったりな気がしますね。

 

モノを運べたりタフなイメージが先行して、走りが鈍臭いのか?という不安は見事に裏切られたし、マルチポジションハンドルも楽ちんなポジションが取りやすくて、普段乗りはもちろん、長距離ライドにも調子良さそう。
結局、こういう「走れて、運べる」自転車が何をするにも一番便利で、ずーっっと乗っちゃうんですよ。仕事にも普段にもカーゴバイクを乗ってる自分が言うんだから間違い無い 笑。

-サンテさんなら、FARPOINTをどんなふうに使ってみたいですか?
デリバリーはもちろんですが、まずは横浜のいろんなところにこれで行ってみたいかな。横浜って、すごく坂が多いんですよ。冒頭にも言っていたように、これなら子供+αを乗せて公園に行くことも十分できそうだし。