PICK UP - 2021.05.19

FUJIの中の人が語る。製品紹介 03 ~FOREAL編~

「本物」である由縁

かなり挑戦的とも取れるタイトルをつけさせていただきましたが…
本日も2021年モデルより、FUJIらしさを存分に詰め込んだモダンスチールバイク、FOREALをご紹介させていただこうと思います。

 

その前にまず、ロードレースにおけるとスチールバイクの関係性について。
例えば、現在はカーボンが主流であるプロのロードレースシーンにおいて、スチールロードが最後に活躍したのはいつ頃のことだったのでしょう?

 

ロードレース世界最高峰、ツール・ド・フランスにおいてクロモリフレームが最後に優勝を飾ったのは、おそらく1990年台中盤にまで遡ります。その後、エアロダイナミズムの進化により、フレーム素材はアルミを経て、カーボンへと移り変わり、クロモリフレームはプロロードレースの第一線から徐々に姿を消していくことになります。

 

ではそれ以来、スチールロードは「速く走る」ための進化を止め、スポーツバイクを愛する人達の選択肢から消え去ってしまったのでしょうか。

 

答えはおそらくノーでしょう。
FUJIは、現在のレースシーンの主流であるカーボンバイクを開発する一方で、これまでも競技志向のスチールロードを数多く生み出してきました。一線を退きおよそ四半世紀が過ぎようとしてる現在でさえ、スチールロードを支持して止まない人が確実に存在することを、わたしたちは確信しています。
フレームセットだけで40万円を下らないハンドメイドビルダーが作るオーダーフレームがクロモリであることも、国内国外かかわらずカスタム系のブランドの多くで素材の選択肢としてクロモリが挙がることも、もしかすると同じ想いのもとにあるのかもしれません。そもそも、現在はカーボンが主流とはいえ、およそ120年もの歴史を持つ前述のツール・ド・フランスにおいては、アルミやカーボンに世代交代していったのはこの数十年のこと。それらとは非にならないほどの長命で、スポーツバイクの王道素材として君臨していたわけですしね。

FOREALは、かつてネオクラシックをコンセプトに展開されていた「SINARI(2018年モデル)」の後継とも位置付けられるハイグレードスチールロードの最新形態です。油圧ディスクブレーキやスルーアクスルなど最新のスペックが盛り込まれる一方で、真円に近いパイプをつなぎ合わせたミニマルなルックスは、カーボンやアルミの複雑な形状をした他のマスプロメーカーのロードバイクとは一線を画す、スタイリッシュな雰囲気すら醸し出します。

 

しかし、モデル名の由来である、for real =「本物」「真剣」が意味するように、FOREALは決してルックスだけにこだわって速さを犠牲にする類のロードバイクではありません。

 

芸術品としての美しさではビルダーメイドのラグフレームにこそ及ばないかもしれませんが、ラグレスで丁寧に組まれた肉薄オーバーサイズのパイプはフレーム全体に適度なしなやかさを生み出します。これにより完成車で10kgを切る車重は、ホイールをはじめとするパーツのアップグレードによりさらなる軽量化も期待でき、カーボンやアルミがメインのレース会場においても渡り合えるポテンシャルを持っています。
大径アヘッドのカーボンフォークは路面からの振動を抑えるとともにライダーから伝わるパワーロスを最小限に減らし、最大28cまでを選択可能にするタイヤクリアランスは、トレッドのあるタイヤを選べばより幅広いフィールドへと繰り出すことも可能です。
油圧ディスクブレーキは、路面状況に左右されず少ない力で確実な制動力を確保するとともに、ブレーキレバーの引きの負担減が高速域での速度コントロールの際のストレス減にいかに貢献するかを実感できるでしょう。

ロードバイクらしからぬ輝きを放つシルバーカラーが施されたフレームに対してブラックパーツで引き締まったモダンなビジュアルは、FUJIらしく個性を前面に押し出しながらも、乗り手や服装を選ばないスタイリッシュな装い。
体への負担軽減に大きく効果が期待できる優れた振動吸収性と、粘りのある乗り味はクロモリならでは。フレーム形状は今やトレンドとして定着したスローピングスタイルで、ジオメトリーは先代のモデルSINARIにも増してロードレーサー仕様となりスピードを重視した設計。
フレームカラーと同系色で主張しすぎないシンプルなFOREALのロゴとバイクの顔に当たるヘッドチューブに収まる小さめの三角富士は、メタリック調で優しい輝きを発する。
クロモリフレームかと一見疑うような大径のダウンチューブは剛性を高め、上下異形のテーパーヘッドチューブにフルカーボンフォークを搭載することでコーナリングの安定感をもたらしてくれる。
レースシーンでも普及が進むディスクブレーキ。フロントとリア共にフラットマウント油圧ディスクブレーキを採用し、前後スルーアクスル仕様。
フレームはイタリアのチューブ(鋼管)メーカー、平和の象徴であるハトのマークでおなじみのコロンブス。おおよそ真円に近いクロモリチューブを採用することで、カーボンやアルミなどに多く見られる複雑なチュービングとは一線を画すシンプルなルックスが特徴。
BB規格はBSAタイプを採用。軋みに悩まされることもなく、交換も簡単。シフトワイヤーは外装に、油圧ケーブルは内装の取り回し。
フロントフォークにはフルカーボンモノコックのFC-440。FUJI独自の機構でフラッグシップモデルであるSLなどにも採用されているRIBテクノロジー(フォークブレード内に強化リブが内蔵されている)を採用し、剛性アップと切れ味鋭いシャープなハンドリングが可能。

皆さんはロードバイクを購入するときに何を想い描きますか?

 

誰よりも軽量な自転車に仕立て上げ、コンマ1秒を競うための機材を求めるサイクリストがいる一方で、オンタイムには通勤手段としてスタイル重視で街中を走り、週末にはサイクルジャージをまとい、遠くを目指して汗を流したい人だっている。
もちろん仲間と行くライドでは、少し太めのタイヤで過度に路面の状況に気を使わず快適に走りたい。一見するとそれぞれが矛盾とも取れるそんな欲望を、実は多くのサイクリストが持っています。
とりわけ日本においては、諸外国に比べ「スポーツバイク=競技」という志向が緩やかで、独自のシーンが広く浸透しているように思います。そのため、グラム単位での重量を切り詰めた軽量なバイクや空気抵抗を最大限に減らす複雑な形状のバイクより、長く安心して愛用できることこそがロードバイクに求められる優先条件であることすら少なくないでしょう。

 

求められる要素は、決して一つではないように思います。

 

選ぶのはおそらく一生のうちにそう何度もない経験。長く乗るものだからこそ。

 

FOREAL(フォレアル)は、わがままなサイクリストのあらゆるニーズに寄り添うことができる、器の広さをもったロードバイクです。